偽りの恋人契約でしたが、御曹司社長に抱き潰されました
「ほら。」

高志さんが腕を引いてくる。私は思わず、その手を振りほどいた。

「嫌ですっ!」

必死に声を上げるも、高志さんは執拗に迫ってくる。

「往生際が悪いな。」

その目はもう、私を“同僚”や“知人”として見ていない。恐怖に、身体が震えた。

「止めてっ!」

悲鳴を上げた、その瞬間だった。

「……高志っ。」

低く、鋭い声が空気を裂いた。

振り向くと、霧島社長――裕哉さんがそこにいた。

怒気を孕んだ目で、高志さんを睨みつけていた。

「なんだ、裕哉か。」

どこか開き直ったように笑う高志さん。だが、霧島社長は拳を握り締めていた。

「高志じゃなかったら、殴ってたところだぞ。」

その言葉に、一瞬場の空気が凍る。

しかし、高志さんは皮肉めいた笑みを浮かべた。

「やっぱり……秘書は大事だもんな。」
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