偽りの恋人契約でしたが、御曹司社長に抱き潰されました
その一言に、霧島社長の理性が切れた。

拳が振り上がるのを、私はとっさに見た。

「社長、ダメです!」

私は反射的に、二人の間に身を投げ出した。

「ケンカなんて……して欲しくないんです!」

自分でも驚くほど大きな声だった。

一瞬、静寂が落ちた。

霧島社長の拳は宙で止まり、高志さんは気まずそうに目を逸らした。

私は、自分の胸の鼓動がうるさいほど鳴っているのを感じていた。

それでも、彼を止めたかった。

殴ってしまえば、霧島社長も傷つく。それだけは、嫌だった。

霧島社長は、ゆっくりと高志さんの肩から手を放した。

その声は冷静ながらも、怒りと決意がにじんでいた。

「……もう、美緒には近づかないでくれ。」

その一言に、高志さんは何も言わず、踵を返してバルコニーを後にした。
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