偽りの恋人契約でしたが、御曹司社長に抱き潰されました
場に静寂が落ちる。

「……あの……社長……」

言葉を探して口にしかけた私を、霧島社長は何の前触れもなく抱きしめてくれた。

「怖かっただろ。」

その声は驚くほど優しく、私の中に溜まっていた恐怖と緊張が一気に溶けていく。

「ごめんな……もっと早く来るべきだった。」

胸に顔を埋めたまま、私は堪えていた涙が零れそうになるのを感じた。

「社長……」

彼の腕に包まれていると、まるで世界の全てから守られているような気がした。

その時だった。

ふいに、彼の顔が近づき、そっと唇が重なる。

驚きとともに、胸の奥がじんと熱くなる。

このキスは――慰めでも、演技でもない。

偽りの“恋人のフリ”を超えて、本当に心が通った証だと思えた。

唇が離れた時、裕哉さんの瞳はまっすぐ私を見つめていた。

「俺は……本気で君が大切なんだ。」

その言葉に、涙がこぼれた。
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