偽りの恋人契約でしたが、御曹司社長に抱き潰されました

第3章 社長室で、甘い未遂

翌週。
社内では重要会議が開かれ、霧島社長は朝からその準備にかかりきりだった。

「……もう、会議始まってから三時間か。」

私は手元の時計に目を落とし、ため息をひとつ吐く。

会議が長引くのは想定内だったが、それにしても予定を大幅に過ぎている。

社長室に戻ってくる気配もない。

部長たちの決裁書類が山のように机の上で待っているのに、サインできるのは霧島社長しかいない。

「急ぎの仕事があるんだけどな……」

つぶやいてみても、もちろん返事などあるはずもなかった。

私は書類の山に視線を落としながら、ふと社長の顔を思い浮かべた。

きっと今ごろ、誰もが注目する会議で矢面に立ち、冷静に議論を進めているのだろう。

けれど、胸の奥が妙に落ち着かない。

この数日の距離の近さが、私の感覚を変えてしまったのかもしれない。

「……早く戻ってきてくれないかな。」

思わず、そんな本音が漏れてしまった。
< 31 / 34 >

この作品をシェア

pagetop