偽りの恋人契約でしたが、御曹司社長に抱き潰されました
ようやく、社長が会議室から戻って来たのは午後一時を回った頃だった。

「お疲れ様でした。」

私は立ち上がって出迎える。

霧島社長は疲れた様子も見せずに、自席へと腰を下ろすと、すぐさま机上の稟議書に目を通し始めた。

「社長、お昼休みは取られないのですか?」

心配になって声をかけると、社長は書類から視線を外さずに応じた。

「ああ。これが終わったら、少し休憩するよ。」

——やっぱりこの人は、仕事の鬼だ。

書類を捌く手の動きに無駄はなく、目の動きも速い。

それでいて、内容はすべて把握しているのだから、尊敬の念しか湧いてこない。

その時、社長室の扉がノックもなく開いた。

「失礼します!」

現れたのは、同僚の桐原君だった。

少し慌てた様子で、私たちの前に立つ。

「田中部長が、稟議書の決裁を早くいただきたいとのことですが……どうされますか?」

彼の後ろには、田中部長の秘書らしき人影も見え隠れしている。
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