らくがきの中の君を、彷徨って見付けてさよならと言って
そんな言葉、初めて聞いた。
ずっと一緒にいたのに、初めて聞いた。

「…そんなことっ、言わないでよ」

声も体も震えて、涙は止まることを知らず溢れてくる。

「咲茉…っ」

「…っ!」

千颯が伸ばした手を振り払ってしまった。

もう千颯の前にいられなくて逃げ出してしまった。

それでも流れてくる涙がうっとおしくて。
冷たい風のせいで赤くなる頬の上、溢れる涙を流し続けた。

走って、走って、息が切れるほどに全力で…

「…っ」

苦しくて、胸が痛い。

詰まる声が邪魔をして息がうまくできない、ひっくひっくと小刻みに震えることしかできない。


こんなことしかできないの、私には。

今の私にはこれしかできないんだよ。



ねぇ千颯、なんでそんなこと言ったの?

どうして言えたの?



そんなこと言わないでよ。



私といれたらいいだなんて、簡単に言わないでよ。



そんなこと1番言ってほしくなかった。



「なんで…っ」

学校へ行くつもりだったのに、気づけば全然違うところに来ていた。ただ無我夢中で走って来たからいつもは来ないようなとこまで来てしまっていた。

でも周りを見る気にもなれない。

はぁはぁと乱れる息で揺れる体を必死に保って、それでも涙は止まらなかった。


もういい加減終わりにしたい、終わりにしなきゃ。



思ってしまった、少しだけ。

羨ましく、思ってしまったの。



本当は私わかってたよ。

もう気づいてた、自分のことだもん知ってたよ。



知ってたの…


私に才能なんかないって。



そんなのとっくの昔にわかってた。

だけど夢を諦めたくなかった。

捨てたくなかった、ずっとまばゆいらくがきの中ひたすらに追いかけていたかったの。


今の私には何も描けない、小学生の頃みたいに夢中に描けない。

何を描いたらいいかわからなくて、白い画用紙の上を彷徨ってる。


描くのが楽しくて何でも描けるって信じてたあの頃の私はどこへ行ったんだろう?



もう忘れちゃった。

私、何もなくなっちゃったんだよ。
< 17 / 25 >

この作品をシェア

pagetop