下町育ちのお針子は竜の王に愛される〜戴冠式と光の刺繍〜
「貴方の仕事場はここよ」
案内されたのは、何人かのメイドが大量の生地に囲まれて縫い物をしている部屋だった。そんなに広い部屋ではないが、山のように積まれた生地のせいでメイドの人数は正確にはわからない。あまりの生地の量に埋もれているように見える。
「作業は順調?」
「あ、オリビア様、お疲れさまです」
彼女はオリビアという名前らしい。彼女に問われて近くにいたメイドが返事をした。
「何分、量が多くて……まだ全然終わりが見えません」
「そう」
オリビアは手を叩いて部屋にいるメイドたちに向かって言った。
「今日はあと一時間作業をしたらおしまいにして。また明日続きをやってもらうわ」
オリビアが振り返ってニコラに言った。
「戴冠式まで時間がないの。この大量の生地は全部、戴冠式の後にある祝賀会で使うテーブルクロスとナプキンよ。祝賀会には世界中の貴族が出席するからどれだけ縫っても足りないわ。わかったら貴方も急いで仕上げて」
それだけ言ってオリビアは立ち去った。
途方に暮れたニコラがその場に突っ立っていると、先ほどオリビアと話していたメイドが「これを見て縫って」と、完成品のナプキンを渡して自分の作業に戻った。
ニコラは辺りを見渡して、かろうじて人一人座れるスペースを見つけた。部屋の隅に置かれた椅子を運んでその場に座る。完成品を確認して、ニコラは持ってきた裁縫箱から針と糸をそっと取り出した。
(もしかしてライアンさんがお願いしたかったのって、このことだったのかな……?)
でも、これなら私にも出来る。
ニコラは慣れた手つきで針穴に糸を通した。
案内されたのは、何人かのメイドが大量の生地に囲まれて縫い物をしている部屋だった。そんなに広い部屋ではないが、山のように積まれた生地のせいでメイドの人数は正確にはわからない。あまりの生地の量に埋もれているように見える。
「作業は順調?」
「あ、オリビア様、お疲れさまです」
彼女はオリビアという名前らしい。彼女に問われて近くにいたメイドが返事をした。
「何分、量が多くて……まだ全然終わりが見えません」
「そう」
オリビアは手を叩いて部屋にいるメイドたちに向かって言った。
「今日はあと一時間作業をしたらおしまいにして。また明日続きをやってもらうわ」
オリビアが振り返ってニコラに言った。
「戴冠式まで時間がないの。この大量の生地は全部、戴冠式の後にある祝賀会で使うテーブルクロスとナプキンよ。祝賀会には世界中の貴族が出席するからどれだけ縫っても足りないわ。わかったら貴方も急いで仕上げて」
それだけ言ってオリビアは立ち去った。
途方に暮れたニコラがその場に突っ立っていると、先ほどオリビアと話していたメイドが「これを見て縫って」と、完成品のナプキンを渡して自分の作業に戻った。
ニコラは辺りを見渡して、かろうじて人一人座れるスペースを見つけた。部屋の隅に置かれた椅子を運んでその場に座る。完成品を確認して、ニコラは持ってきた裁縫箱から針と糸をそっと取り出した。
(もしかしてライアンさんがお願いしたかったのって、このことだったのかな……?)
でも、これなら私にも出来る。
ニコラは慣れた手つきで針穴に糸を通した。