溺愛している娘は俺の宝物だった

君を知りたい

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「かなえ、無理だって」 

 高校が終わってすぐ茶色の基調の制服姿のまま、クラスメイトの縁戚のかなえに、私はぐいぐいひっぱられ連れて行かれる。

 待ち合わせの公園は、通っている学校からすぐ近くだった。

 少し大きめの整備の行き届いた、桜の並木道が有名な場所である。

 でも今は、夏休みが終わったばかり。

 ようやく涼しげな風が吹き、空が茜色に染まる中、私はかなえと公園へ入ってゆく。

「だめもとで訴えるの。ゆみ、手伝って」

 強引な気の強いかなえは、私と遠縁で繋がりがある。

 訳ありの私を何かと世話を焼いてくれていて、かなえのことは嫌いじゃない。

 今回の件は、困り果てていた。

「あっ、あの車だわ」

 公園の広々とした駐車場に、黒塗りのベンツがとまっていた。

 車の脇に、切れ長の瞳を持つ美貌の青年は、洗練された上品な紺のスーツ姿でが立っていた。

 どこかで見たことあるような?

 私は、妙な胸騒ぎとともに、胸の鼓動は波打ち始めていたーー。



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