溺愛している娘は俺の宝物だった
 2


 小走りでやってくるまだ十代の二人の少女に目をとめ、俺は訝しげに眉根を寄せている。

 声をかけてきた少女は、最近参加したチャリティーパーティで会った。

 なんとなく気に入ったので、今回俺から誘ってみた。

 もう一人は、その少女に多少なり似ているが、会ったこともなく知らないはずなのに。

 俺は、その少女を見た瞬間から、つかみところがない不思議な胸のつっかえを感じている。

「遅れて申し訳ございません。先日お会いした杉本まひとさんですよね?」

 かなえは、少女を連れて俺の前へ立ち、息を整えてにっこりと笑う。

「そうだが?」

 綾絹のような腰まである、まっすぐの長い黒髪。

 初々しい薔薇色の頬。

 ローズピンクの唇をしている、二人の少女。

 お揃いの茶色を基調とした、お洒落なブレザーの制服を着ている。

 容姿ともに日本人形のように愛らしく、よく似ていた。

「ごめんなさい! 私はやっぱり無理です。それで、本日はおすすめの遠縁の子を紹介します」

 かなえは、ぐいっと目の前の少女を俺のすぐ前へだした。

「遠縁?」

「はい。同じ17歳で、私のクラスメイトでもある子で、白井ゆみです」

 かなえは、笑顔で言う。

 そばにいる困惑しているゆみという名前の少女は、半ば瞼を伏せてしまっている。

 小刻みに震える長い睫毛の下に、憂いの帯びた深緑かかった黒い瞳。

 その瞳は、大人へ移り変わろうとしている、ゆみの微妙な心を映して潤んでいた。

 利発そうなかなえと違い、妙に儚く艶やかな色香が滲んでいる。

 それは、どこか見覚えがあった。

「……ふーん。それじゃあ、今日はこの子、白井ゆみをエスコートしたらいいのかな?」

「はいっ!」

「あの。無理はしなくてもよろしいですよ?」

 ゆみは、意を決したのか、俺を見上げた。 


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