溺愛している娘は俺の宝物だった
  3


 上流階級としかいいようもない身なりに加えて、精悍な顔立ちに意志の強さを感じる口元。

 想いつめたような光を滲ませた、切れ長の二つの瞳。

 彼が私の様子をうかがうように見据えていることに気づき、思わず固唾を呑む。

「……駄目ですか? やっぱり」

「構わない。かりていく」

 そう言うなり、彼はその手を伸ばして、私の腕を捕まえた。

「だ、だから」 

 彼は、尻ぞいた私を精悍な胸の中へ引き寄せる。

 運転席へ目で合図した彼は、後部座席の自動ドアを開けさせた。

「じゃあ、よろしくお願いしますね。まひとさん!」 

 かなえは、ほっと安堵の息をついて、深々と頭を下げている。

 彼は、かなえには目をくれず、そのまま私を車へ押し込み、自分も乗り込んだ。


 
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