溺愛している娘は俺の宝物だった
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 俺は、白井ゆみを連れて歩いていた。

 まずはブランド店へ行って、あれこれ選んだ物をゆみに一着ずつ着せる。

 下校中の学校指定の制服では、高級レストランでは目立ちすぎて連れて行けない。

 じっくり見比べて、俺は最終的に上品な茜色のワンピースをセレクトする。

 そのあと、俺は予約を入れていた馴染みの高級レストランへ連れてゆく。

 ゆみは、高校生にしては良家のかなえと同じように上質なマナーがなじんでいる。

 物腰優雅で気品のある可憐な姿。

 俺は、満足気に眺めていた。

 最初は、パーティで見かけた良家の娘であるかなえのことが気に入って、今回誘ってみた。

 まだ高校生で、すぐに結婚まで進むことがないので、俺の気持ちとしてはお気楽なものだった。

 遠縁のゆみと似ているかなえに、どこか俺自身心に触れるものがあったのかもしれない。

 俺は、目の前のおっとりで清楚、従順なゆみに夢中だった。

 まだ思い出せない胸の疼きを、俺は如実に感じている。

「おいしかった?」

「ええ」

 俺とゆみは、車内で帰途を和やかに過ごしている。

「なら、良かった。確か桐浜かなえちゃんの家の近所って言っていたから、彼女の家の近くへ送ればいいのかな?」

「はい。ありがとうございます」

 凛とした可愛らしい声。

 ほんのりとピンクの紅を塗った、サクランボのような唇。

 愛らしい彼女の瞳が、まだ少し恥ずかしそうに潤んでいる。

 俺は、一緒に楽しい時を過ごして、どんどん白井ゆみに惹かれてゆくのを実感している。

 この子、知っている。

 まだ自分の中では、何も思い出せてはいないけれども。

 俺の中で、それは確信に変わっていた。

「じゃあスマホの番号を教えて貰ってもいい?」

「それは……」

 拒否しかけたゆみの唇を、むっとした俺は、彼女の腕を引き寄せる。

 精悍な頬を傾けて、ゆみに押し被さるようにキスした。

「!」

 震えだしたか細い体に唇。

 俺は、どうしてもゆみの愛らしい唇が欲しくなり、自分の衝動に突き動かされてしまった。
  
 「……いいね?」

 唇が離れて長い睫毛を押し上げて目を開けたゆみは、一瞬息を呑み、そして小さく頷いたーー。
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