すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 正直、スヴェンが実の父だと言われても、一度も会ったことがない私は、事実を冷静に捉えることしかできなかった。
 ただ、彼が多くの人に慕われていたことだけは、確かに伝わってくる。

 私は自分の話もした。
 エリオスから少し事情を聞いていたようで、簡潔に話したにもかかわらず、エレノア様は真摯に耳を傾け、私の心情を理解しようと努めてくれた。
 そして意外な言葉を口にした。


「あなたは過酷な状況で育ってきたのに、とてもまっすぐで聡明な子ね。きっとお母様の教育がよかったのね」

 胸が熱くなり、思わず涙が滲んだ。

 母は苦しみの中で亡くなり、父の暴力にも耐えながら、私を守ってくれた。
 そんな母を褒めてもらえることが、心の底から嬉しかった。


「あなたのお母様のお話も聞きたいわ」
「はい」

 私は母が生きていた頃の話をエレノア様に話して聞かせた。
 だけど、私はスヴェンのことを母から一度も聞いたことがなかったので、ふたりについて話すことはできなかった。
 それでも、エレノア様は穏やかな表情で微笑みながら、黙って耳を傾けてくれた。

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