すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 その夜、スヴェンの日記がずっと頭に残っていた私は眠れず、そっと部屋を出ていった。
 向かった先は、やはりスヴェンの部屋だった。

 不思議と、あの部屋は心を落ち着かせてくれる。
 画材の匂いが漂うせいだろうか。
 花の香水よりも、絵具の香りに私は安らぎを覚える。


 廊下で視線の先に誰かが歩いてくるのを捉えた。
 杖をつき、ゆっくりと歩くその姿はエリオスだった。
 ひとりきりだ。

「エリオス、こんな夜遅くにひとりで大丈夫なの?」

 私が慌てて駆け寄ると、彼はにっこり微笑んだ。

「壁にはぶつからないから平気さ。障害物はわかるんだよ。ぼんやりと、何かがそこにある気がするんだ」
「でも、転んだら……」
「確かに足もとはわからないな。だが、君の気配は察した。近くに君がいることがわかって出てきたんだ。どこへ行くんだ?」
「スヴェンの部屋に……眠れなくて」
「なら、俺も一緒に行っていい?」
「ええ。構わないわ」

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