すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「忙しくて時間が取れないの。もう少しだけ待ってくださらない? 今日も明日もパーティなのよ」
「そ、そうか……できれば急いでほしいのだが」
「これでも寝る時間を削って描いているの。これ以上は無理だわ」

 すかさず母が口を挟む。

「セリスは充分頑張っているのよ。無理をさせては駄目だわ」
「む……そうだな。私が悪かった」

 伯父様は母の言葉には逆らえない。
 けれど母は私の味方をしているわけじゃない。
 大事な資金源が体を壊すと困るから優しいふりをしているだけ。

 私はそんな母のしたたかさを、誰よりも知っている。
 だからこそ、母を操ることくらい私には造作もないことよ。


 それにしても、たかが1カ月納期が延びただけで小言を言うなんて、本当に鬱陶しいわね。
 私がいなければ伯父様だってお金を稼げないというのに。

 でも、もう少しの辛抱よ。
 アベリオと結婚すれば私は侯爵夫人。
 社交に専念すれば伯父様とも縁を切れるわ。

 今は依頼を適当にこなし、時間を稼げばいい。
 がむしゃらに働くのは、私の美意識に反するもの。


 やがて私は1年に1作だけ絵を描く絵師になるの。
 そうすればその価値は飛躍的に高まり、人々は何年も私の作品を待ち望むわ。

 そう。私は唯一無二の聖絵師(オーラリスト)になるのよ。

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