すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「子どもの頃の話よ。今はそんなこと、していないわ」

 アベリオは眉を寄せ、低い声で言った。

「次からは、社交の場には僕も同行する。君は僕の婚約者なんだから」
「わ、わかったわよ」


 最近のアベリオは息が詰まるほど窮屈なのよね。
 こんな人だったなんて、幻滅したわ。

 ああ、もっと私を理解して、好きなことをさせてくれる寛大な殿方はいないのかしら?


 そうだわ。ノルディーン公爵よ。
 あのお方なら、私の理想にぴったりだわ。
 目が見えないのだから、私が何をしていようと口を出すことはできないはず。
 それにアベリオよりずっと美しいお顔をしているし、財力も桁違い。

 ああ、レイラにはもったいない方だわ。
 あの子はもう絵なんて描けないんだから。
 私が代わりに描いてあげればいいのよ。

 公爵のために、誰も見たことのないような美しい絵を。


 そうと決めたら、すぐに手紙を書かなくちゃ。

『あなたのために絵を描かせてください』

 丁寧に、愛を込めて記しておいた。

 アベリオ? もういいわ。
 あんな退屈で口うるさい男、もう私には必要ないもの。

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