すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 エリオスとともに応接室へ赴くと、そこにはにこにこと愛想笑いを浮かべる父がいた。
 その笑顔を見た瞬間、背筋がひやりとした。
 この顔を、私はよく知っている。
 社交界で取り繕うときに見せる、あの偽りの仮面だ。

「お久しぶりです」

 努めて静かに告げると、父はわざとらしく大袈裟な声を上げた。

「おお、レイラ。お前がいなくなって心配したんだぞ! 無事だったなら、なぜすぐに連絡をくれなかったんだ?」

 私は一瞬も迷わずに返す。

「連絡すれば、他国へ売られると思ったのです」

 ぴたりと空気が止まった。
 父の笑顔が引きつり、強張った頬がわずかに震えているのがわかる。
 私はその変化を見逃さず、平静を装ったまま続けた。

「お父様の命令通り男爵家へ嫁ぐ際、同行していた者たちが話していました。あなたが私を異国へ売り飛ばそうとしていると。多額の金銭を受け取られたのでしょう? そんな人のもとへ、誰が戻りたいと思うでしょうか」

< 165 / 231 >

この作品をシェア

pagetop