すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 胸の奥が痛くなる。
 母がなぜそのような経緯で父に嫁ぐことになったのかは知らない。
 どのような事情であれ、表向きは母の裏切りというのも否定できない。
 けれど――

「なぜ離縁しなかったのです?」

 私は冷静に問いかける。

「お母様はあなたとの離縁を望んでいました。暴力が酷くなったとき、本気で私を連れて家を出ようとした。けれど、あなたがそれを阻止した。なぜです? そんなに恨んでいたのなら、離縁してもよかったはずでしょう?」

 父の手が震え、拳を握る音が聞こえた。
 その視線が刃のように鋭く、今にも私に襲いかかりそうな勢いだ。

 しかし、エリオスの存在がその怒りを押し留めているようだった。
 父はちらりと彼を見て歯を食いしばる。

「レイラ、これ以上私を失望させないでくれ。あんまりじゃないか」

 父の声が震えている。怒りか、あるいは怯えているようにも窺える。

「私が離縁していたら、お前も母親も露頭に迷っていたんだぞ。当然、神殿からも追い出され、お前は聖絵師(オーラリスト)になることもできなかった。なぜ、そこまで私を恨むんだ?」

 父はまるで自分が被害者のような口ぶりに変わった。
 以前の私なら、どんなに暴言や暴力があっても父親だからと絆されていた。

 けれど、今はもう何も感じない。

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