すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 ああ、これが彼の心なのだと直感でわかった。
 その瞬間、私の頭の中にぼんやりと光の景色が浮かび上がった。
 けれど、それを見た自分に少し驚き、頬がじんわり熱くなった。

 これは、エリオスの願望なのかしら。

「手が冷たいな」
「えっ……あ、そうね。明日のことを考えると緊張してしまって」
「じゃあ、このまま手を繋いでいようか」
「え?」

 握られた手が、息を呑むほど熱かった。
 いや、熱いのは私のほうかもしれない。
 だって、エリオスから伝わってくる“思い”が、あまりにまっすぐで、そして少しばかり恥ずかしいものだったから。

 この光景をそのまま絵に描くことができる。
 でも、それをする勇気は、今の私にはとても持てなかった。

 そんな私の迷いを見透かしたように、エリオスは小さく笑って言った。

「そんなに月が綺麗なら、俺の絵を描いてくれるだろうか?」
「エリオス……っ!」
「だめなのか?」
「だって、そんな……」

 ああ、やっぱり気づかれていたのだわ。
 私が、彼の心を察してしまったことに。

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