すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 光の絵は、形や色を正確に写しとることはできない。
 ただ、人の心の中にある“想い”を淡く映し出すだけ。

 たとえ彼のために私の肖像画を描いたとしても、実際に私の顔を彼が見ることはできないのだ。
 けれど――


「……わかったわ」

 私は夜空に向かって手を掲げた。
 月光の下に光を帯びた線がいくつも重なっていく。
 それはどんどん広がっていき、だんだんと形になってくる。

 なぜこのようなことができるのか、私はいまだにわからない。
 人によっては私が魔法を使っているように見えるだろう。
 けれど、何か特別なことをしているわけではなくて、ただ、光の中に絵を描いているだけ。


 仕上がった光の絵はドレスを身につけた女の姿だった。
 けれど、それは私が知っている自分とはどこか違っていた。

 そこにいたのは、まるで女神のように美しい女性。
 エリオスの心の中の“私”なのかもしれない。

 あまりに眩しくて、恥ずかしくて、思わず視線をそらしてしまう。

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