すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「あなたは?」

 アベリオが怪訝な顔で訊ねると、侯爵は微笑を浮かべて答えた。

「私はマーク・ハルトマン。カルベラ国からの客人であり、レイラの伯父です」
「は?」

 アベリオは眉をひそめ、意味がわからないといった表情を浮かべた。
 私はすかさず彼に説明する。


「私の、血の繋がった家族よ」
「レイラ? 何を言ってるんだ?」
「侯爵様は、私の実の父の兄なの」
「意味がわからない。君の父親は……」
「スレイド家の父とは、血の繋がりがなかったのよ」

 アベリオは一瞬黙り込み、ようやく事態を飲み込んだように肩を落とした。


「ああ、そうか。だから君は家族と上手くいっていなかったのか。でも大丈夫だ。僕の家に入れば」
「もう、そういう問題ではないわ」

 私がきっぱり遮ると、ハルトマン侯爵が言葉を挟んだ。

「君はレイラに求婚しているのか? それなら、まずハルトマン家に正式に縁談を申し込むべきだ」

 アベリオは侯爵をじろりと睨みつける。

「僕はレイラの父に許可を得ている」
「だから何度も言っているだろう? レイラの父は私の弟だ。つまり、レイラはハルトマン家の人間だ。何度も言わせないでくれ」

 普段は穏やかな侯爵の声音が、今は静かな威圧を帯びている。
 アベリオは目を見開き、後ずさる。

 侯爵はその様子を見て、わずかに口角を上げた。

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