すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
 私は彼の手を握り、そっと意識を向ける。
 エリオスの心の”思い”を感じとることができないかと願ってみたけれど、何も感じなかった。


 私のせいだ。
 あのとき、セリスをあんなふうに煽らなければ、彼がこんな目に遭うこともなかったのに。

 そう思うたびに、涙ここみ上げてくる。
 胸が締めつけられて、息をするのも苦しくなる。

 後悔の波が何度も押し寄せ、そのたびに心が軋んでいく。


「……エリオス……目を、覚まして……お願い……」

 彼の顔をじっと見つめながら、震える声で言葉をかける。
 私の声は静寂の中に虚しく消えていく。
 けれど、頭の中では次々と彼との思い出が浮かんできては、私の胸を締めつけた。

 彼が私の絵を好きだと言ってくれたこと。右手はきっと治ると、信じて励ましてくれたこと。
 どんなときも、私の心を救う言葉をくれたこと。

 そして、彼に触れられたときの感覚や、抱きしめられたときの温もり。
 そのすべてが、今は胸の奥で痛いほど恋しい。

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