すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~
「すまない。無理に訊くことではないな」
「いいえ。きちんとお話しようと思うわ」


 私は、これまであったことをエリオスに説明した。
 聖絵師(オーラリスト)としてこの2年間ほとんど家にこもって仕事をしてきたこと。父から受けた暴力や、婚約者から破談されたこと。そして、セリスからされたこともすべて。
 
 話し終えると、エリオスは眉を寄せ、ほんのわずかに表情を歪めた。
 やはり、こんな話は重すぎただろうか。彼を困らせてしまったのではないかと、そんな不安が頭をよぎる。


「ごめんなさい。こんな話……」
「いや、話してくれてありがとう。君は相当苦しんだんだな。無理に聞いて悪かった」
「ううん。このお屋敷に来て、皆の優しさに触れているうちに、少しずつ心が癒えてきたから大丈夫」

 ここでの暮らしは、あまりにも実家とは違っていた。
 屋敷の人々は私に申し訳ないほど気遣ってくれるし、誰もが優しい笑顔を向けてくれる。
 声をかけられるときも穏やかでやわらかい口調だ。

 冷淡な言葉に慣れた私には、その優しさが驚きで、涙が滲むほど嬉しくなる。
 それはエリオスに対してもそうだった。

< 84 / 231 >

この作品をシェア

pagetop