Secret love.
翌日の大学で友人に捕まり及川くんと出掛けた事について聞かれた。


「どうだったの、昨日の映画館デートは。」

「だからデートじゃないってば。ただ遊びに行っただけ。」

「良い感じにならなかったの?」

「良い感じって?」

「好きになっちゃったとか。」


友人にそう言われ、完全に否定も肯定も出来ない複雑な感情だった。全く及川くんの事を意識しなかったわけでは無いけど、まだ恋になったわけでもない。

友人の質問に悩んでいると「ふーん、満更でも無さそう」とニヤニヤしていて、少し顔が熱くなる。


「まだわかんないよ、そんなの。…でも、今度2人で家で映画見ようって言われたんだけど、これって普通?」

「いやいや、普通じゃないでしょ!」

「だよね…。」


友人は興奮した様子を見せていたけれど、私は余計に悩んでしまう。あの日の及川くんがどういうつもりで言っていたのかと。

講義室で友人と話していると、続々と人は入ってきて、その中に及川くんの姿もあった。何となくドアの方を見ていると、及川くんと目が合って笑顔でこちらに近付いてくる。


「おはよ。」

「おはよう。」


朝の挨拶を交わすと、友人が気を遣って「及川、ここ座る?」と言いながら既に立ち上がって、及川くんは「ありがとう」と返しながら、そのまま隣の席に座る。

昨日の今日だからなんとなく2人で話すのは気まずい。


「映画の件だけど、週末は何か予定ある?」

「週末はバイト20時くらいまで入れちゃってて、その後だったら。」

「じゃあ土曜日に俺の家で…、というか、迎え行くよ。」

「え、いいよ。最寄りまで行くし。」

「いいから。」


強引に迎えの約束を取り付けられるけど嫌ではない。夜遅いのを気遣って迎えに来てくれるのかと思えば、むしろ優しさすら感じる。


「…わかった。じゃあお願いしても良い?」

「もちろん。」


そのタイミングで教授が講義室の中に入ってきて、会話はストップする。その後はお互い話さずに講義を受けた。
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