Secret love.

「及川くんにこんなに振り回されても結婚する優しい女なんて私しかいないな。もし私と別れたらこれから先ずっと独身だよ、及川くん。」


揶揄うつもりでそう言ったのに、及川くんは真剣な表情で私の手を握るとそのままこちらを見つめてくる。

てっきり「縁起でもないこと言うなよ」ってすぐにくると思っていたのに、予想していた様子とは全く異なっていた。


「別れないし、今後先優花以外を選ぶつもりもない。てか、優花が今後先相手じゃないなら1人の方が良い。」


真剣にそんなことを言われるだなんて思っていなかったから思わずこんなところでドキッとしてしまった。

周りの席は空き始めていて誰もいなくて本当に良かったと思う。


「顔赤い。」

「…及川くんのせい。」

「悪くないな、その言い方。可愛い。」

「本当にいい加減にして！」


交際期間は不器用な愛に気付かなくて何度もぶつかってきた。

そんな過去はなかったのではないかと思うほどに結婚してからはずっと甘く溺愛されている。


「このままゆっくり話してたいけど戻んなきゃな。頑張るかあ。」

「今日晩御飯何が良い？及川くんの好きなものをつくってあげよう。」

「まじで？仕事モチベ上がるわ。後で連絡する。」

「そう言って領収書渡す時にいつも言ってくんじゃんか。」

「どうせ会えるしとか思ってつい。」


そう話しながら会社まで共に戻っていく。

隣を当たり前に歩けるこんな毎日をずっと望んでいて、ようやく叶った。こんな小さなことが幸せだと秘密の関係性があったからこそ気付けたのかもしれない。