Secret love.
先程まで怒っていたのにこういう事で上機嫌になるから、私は簡単に扱われるのだと思う。


「喜んでくれた?」

「うん、嬉しい。」


私の返事に「そう」と言いながら及川くんも少しだけ嬉しそうに笑ってから、照れを隠す様にワインに口付けている。やる事は凄くスマートなのに、時々恥ずかしそうにほんの少し顔を赤くしているのを知っている。

本人は認めないだろうから言わないけれど、及川くんの好きな一部分。


「でも、もしバレたらどうするの?それとも会社では外す?」

「外さないよ。一生付けてる。」

「一生って…。」

「バレないと思うけどな。誰も気付かないけど、実は…みたいなの、秘密の醍醐味じゃね?」

「悪趣味。」


及川くんの先程の一生付けてるの言葉には、私が考えている意味は無いのか。その言葉についてはそれ以上何も言わなかった。

一瞬プロポーズみたい、なんてドキッとしたのに、欲しい言葉は出てこないから、特に何も言わずに出た言葉だったのかもしれない。

少しモヤモヤするけど、今日はお揃いをしてくれたってだけで、ひとまず満足しようと思う。
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