Excessive love.
「それじゃあ、私は帰りますので。また次回よろしくお願いします!」

「あ、ちょっと待って…。直樹さん! 安住さん帰っちゃいますよ!」


 廊下に向かって声をかけると、ちょうど着替えを終えた直樹さんが部屋から戻ってきた。


「もう帰る?」

「はい。また頼まれた日に来ますからね」

「うん。分かった」


 玄関まで二人並んで安住さんを見送ると、パタンと扉が閉まり、家の中に静かな二人きりの時間が戻ってきた。

 先ほど安住さんの前で額にキスされたことが、まだ熱を持って尾を引いている。隣に立つ直樹さんを少しだけ恨めしく見上げると、彼は「ん?」と優しく微笑み返してきた。

 …だめだ、この笑顔はずるい。

 少しは抗議したいのに、それ以上に好きという気持ちが勝って、文句の言葉は飲み込まれてしまった。


「早くご飯にしよう。先温めたり準備しておくから着替えてきて」

「…はい」


 素直に返事をして自分の部屋へ向かおうとしたその時「あ、ちょっと待って」と呼び止められて振り返った瞬間、唇に柔らかい感触が触れた。

 驚きで固まっている私をよそに、彼は唇を離すと「ただいま」と、今日二度目の挨拶を囁いた。


「な…、さっきもこの挨拶したじゃないですか…」

「ただいまのキスはしていなかったからノーカウントだな」


 直樹さんは笑みを浮かべ、そのまま機嫌よさそうにキッチンの方へと歩いていった。

 この人と一緒にいたら、心臓がいくつあっても足りそうにない。
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