Excessive love.
「そう言えば、相談があるんだけどいい?」

「相談ですか?」

「相談は二つ。まず、家では敬語やめない?」

「敬語…ですか?」

「そう。付き合ってるのに敬語で話されるの何だか変な感じがして」


 今までずっと上司と部下という関係だったから、敬語で話すことが当たり前になりすぎていた。彼がそこに違和感を抱いていたなんて、全く気付かなかった。

 確かに恋人同士で敬語は不自然かもしれない。だけど、染み付いた習慣を急に変えるのは気恥ずかしくて、難しい事だった。


「あの…、やっぱり急には…」

「名前呼びも変えられたんだから大丈夫。実季なら出来るよ」

「他人事だと思って! 結構大変なんですから」

「大丈夫。出来るだけ意識してやってみて」


 顔を真っ赤にして反論する私に、直樹さんは優しい笑みを向けて促してくる。そんなふうに優しく言われたら、頷くしかないに決まっている。


「…そ、それで、二つ目の相談って…?」

「寝室を一緒にしない? 嫌じゃなかったらだけど」

「あ…、そう、ですよね…、違う…。そ、そうだよ、ね?」


 今まで以前と変わらず、お互いの個室で眠っていた。だけど確かに、交際して一緒に暮らしているのに、このままでいいのだろうかと心のどこかで疑問に感じてはいた。


「君を抱き締めながら寝たいんだけど、良かったらどう? 俺の部屋の方に移動してこない?」


 そんなふうにストレートに請われて、断れるはずがない。

 それに、こういう提案を自分からするのは苦手だから、直樹さんの方から言葉にしてくれるのは、本当はすごく嬉しかった。

 私が小さく頷くと、彼はパッと顔を輝かせて「よかった。今夜から待ってる」と言い、食事を再開させた。

 今夜からと急に決まってしまうと、それはそれで心臓が持たない。

 一緒に眠るというそう意識をするだけでも、どうしてもあのホテルでの一夜が脳裏をよぎる。きっと、まだ昨日のことのように思い出して意識しすぎているのは、私だけだとは思う。
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