Excessive love.
「落ち着けって。分かったから」


 宥めるように私の肩に触れてきたその手を、思い切り振り払う。

 気づけば、視界は涙で滲んでいた。
 私はそのまま、目の前の隆太を睨みつけた。

 そもそも、かつて私を深く傷つけたこの男に、今更君のためだなんて顔をして不安を煽る権利などどこにもない。

 たとえそれが何かの間違いや不慮の事故だったとしても、今の私にとっては知る必要のない事実だ。

 直樹さんを信じている。それだけでいい。


「…姫野さんにそうされて、自分が絆されたからって、直樹さんのこともそうだって言いたいの?」

「違う、そんなつもりじゃ…」

「私の為だとか、ふざけた事言わないでよね。言ったら絶対に許さないから」


 隆太に浮気された時は、これほどの怒りは湧いてこなかった。あの頃はすでに関係が冷え切っている自覚があったし、どこかで私じゃ不満だったんだなと諦めている自分さえいた。

 けれど、直樹さんは違う。付き合う前からずっと、彼は私を尊重し、大切にしてくれていた。今のままの私を好きだと言って、丸ごと受け入れてくれた。

 本気で愛しているからこそ、失うことが、裏切られることが、死ぬほど怖い。


「…帰る。その写真は破棄しておいて」


 それだけ言い捨てると、振り返ることもせずエレベーターへと足を向けた。

 結局、写真を見たわけでもないのに、もしかしたらと言う考えが薄れてはくれない。

 信じている。信じているはずなのに。

 最悪の想像が膨らみ、まともな思考が奪われていった。
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