Excessive love.
エレベーターを降りてゆっくりとした足取りで会社から駅に向かって歩いている時だった。


「実季!」


後ろから声を掛けられ振り返ると、優花が笑顔で駆け寄ってきて私の顔を見るなり、その表情は硬くなる。


「…どうしたの、実季。朝倉さんと喧嘩した?」


そう問い掛けられて首を横に振るも一度抑え込んだ涙が零れてくる。


「え、ええ!?ちょっと待って、一回端によって…。」


泣きだす私の手首を掴んで端の方に行き、そのままハンカチで顔を拭いてくれる。


「あ、ちゃんと綺麗だから!トイレで手洗って拭いたハンカチとかじゃないからね!」


そんな心配してないしいつもなら笑えて来るのに、今は優花のハンカチで涙を拭いて抑える事に必死だった。

仮にも人が通る様な場所で、良い年こいた女が声を上げて泣くことなど出来ず、声にならない嗚咽をもらす。


「こまったな…。ここじゃ落ち着いて話せないし…。ちょっと待ってね。」


そう言いながら優花はスマホを取り出して耳に当てながら私の腕を引いて歩き出した。

こんな風に泣くのも久し振りで、優花に迷惑を掛けるつもりはなかった。大人になってこんなの、情けないし恥ずかしい事だ。


「及川くん?ごめん、実季を家に連れ帰ろうと思うんだけど、緊急事態で…。出来れば夕飯は外で食べて帰ってきてくれる?」


この姿を同僚である彼に見せない様に気を遣ってくれたのか、帰る時間を遅らせてくれている様だった。こんな精神状態の時に会えたのが優花で、幸運だと思う。
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