Excessive love.
仕事は当然終わるはずがなく、22時を過ぎてもまだ私はオフィスに1人残っている。

後1時間程で終わるかもとようやく目途が立ち、テーブルの上のスマホに目をやった。画面が光ってその通知欄には直樹さんからの連絡が入っている。

内容は開かなければ分からないけど、今は開いて直樹さんとどう会話をするのが正解か分からなかった。

仕事に必死で気付かなかったと言う体でもう少し返事を先延ばしにしようと、スマホを裏返してキーボードに手を置く。

今私には別れるしか選択肢が残されていない。それは分かるのに、この関係を手放したくないと言う思いが強すぎて中々決断できなかった。

どうして大好きだと思っている人に別れを告げなければならないのか、と理不尽に感じるけれど、それでも私のせいで巻き込めない。

これほど考えても答えは変わらなかった。

考え事をしていると突然外線の音が鳴り響く。こんな時間に電話が鳴ることなど無いから、社内の人間かもしれないと思い、受話器を手に取った。


「お電話ありがとうございます。…─────。」


マニュアル通りに念の為電話に出ると『あ、まだ会社だったか。』と、直樹さんの声が聞こえてきた。

機械に通された声でもすぐにわかる、この声だけは。「…お疲れ様です。どうかなさいましたか?」

『お疲れ様。まだかかりそう?』

「…あ、…はい。今日はまだかかりそうで、遅くなるので私の帰りは待たなくても大丈夫です。」

『そんなわけにはいかないだろ。…声、疲れてるな。今日様子変だったし何かあった?』


今、そんな風に優しく声を掛けられたくない。せっかく決めた判断が鈍ってしまいそうになる。

直樹さんの声を聞くだけで少し泣きそうになって、必死に涙をこらえる。


「…いえ、何でも無いです。ちょっとボーっとしちゃって…。」

『何を考えてる?』

「───…っ、」


見透かされたくないのに、既に見透かされている様なそんな感覚。

私の考えている事なんて、直樹さんに勘付かれる事はあってはならないのだ。


『…明日、一緒に早く出社して終わらせよう、その業務は。だから、今日はもう業務を終了させて。』

「…ごめんなさい、帰れません。」

『どういう意味?終電が心配なら迎えに行くけど。』

「違うんです…!そうじゃなくて…、もうその家に戻れないんです。」


私の言葉をすんなり受け入れることができないのか、直樹さんの言葉が中々返って来ない。その間で再度「…帰りたくないんです。」と言い切る。

終わりにする時は早い方が良い。長引かせると判断が鈍るから。
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