Excessive love.
 別れてから数カ月。今さら謝罪の言葉を聞くことになるとは思ってもいなかった。

 彼がしたことを完全に許すことはできないけれど、もし今回の件を丸く収めることに尽力してくれるなら、その時はようやくただの同期として向き合える気がした。


「…お願いね」

「分かった」


 立ち上がった隆太は、出口へ向かう際に直樹さんの隣で一瞬だけ足を止めた。それから何も言わず、軽く会釈だけをして去って行った。

 姫野さんとの件には片がついた。
 だけど、私と直樹さんのことは、まだ何ひとつ解決していなかった。


「…ごめんなさい」

「…何に対しての謝罪?」

「電話での言葉、本当は…、そんな事思っていなくて…」


 言葉がうまくまとまらない。伝えたい想いはたったひとつなのに、この状況でそれを口にするのは、自分勝手で都合が良すぎるのではないかと躊躇してしまう。

 沈黙に沈む私を見かねたのか、直樹さんは静かに「…そんなに、俺に頼れなかった?」と問い掛けてきた。その問いに、私は急いで首を横に振った。


「とにかく写真を拡散させないことに必死で…、もうそれしか考えられなくて…。直樹さんに話したら写真拡散するって言われていて…、それ以外何も考えられなくなった」

「……複雑だな。守ろうとしてくれた実季の気持ちは汲みたいけど、でも、それで別れを取られたことが何よりショックだった」

「ごめんなさい…」


 もう、謝ることしかできなかった。直樹さんの言うことは、あまりにも正論で、もし逆の立場だったら、どんな理由があれ、私は立ち直れなくなっていたと思う。

 さっきまでの私は、別れることこそが彼を守る唯一の手段だと信じ込んでいた。だけど、その独りよがりな決断の中に、直樹さんの感情はひとかけらも含まれていなかった。

 彼が知らない間に物事を進め、私の言葉で深く傷つけてしまった。
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