Excessive love.
「それと今日食事に誘った理由なんだけど、昨日色々考えていて…」

「うん」


 昨日の話題が出た瞬間、背筋に一気に緊張が走った。昨日のこと、というだけで、どうしても反射的に身構えてしまう。

 だけど、ここで逃げ出すわけにはいかない。
 私は手を膝の上で握りしめ、静かに言葉の続きを待った。


「まだ交際してそんなに長くないし、迷ったんだけど…」


 そう前置きして紡がれた言葉に、私は自分の耳を疑った。

 あまりに唐突で、予想もしていなかった言葉だったから。


─────…結婚、しないか?


 いやいや、流石に聞き間違い…。そんな都合の良い言葉なんてない。

 乱れそうになる動悸を抑えるために、手元のカシスオレンジを喉に流し込む。それから、慎重にグラスをテーブルに戻した。


「ごめん、何て言った?」

「結婚したいって言った」

「あ、聞き間違いじゃなかった…」

「聞き間違い?」

「…いや、だって…、私あんなに直樹さんの事傷付けた後で、結婚なんて、そんな都合の良い話ないって思って…」

「都合の良いってそれは実季もそうなればいいって思ってくれるって事?」

「それは…」


 私自身、直樹さんと将来を共にすることに、不安も拒絶も一切ない。

 むしろ、この人以上に好きになれる人なんてこの先現れないと確信している。

 だけど、本当に私でいいのだろうか。直樹さんの隣に立つのが、私のような未熟な人間でいいのかという迷いが、どうしても消えてくれない。
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