Excessive love.
「わ、本当だ。俺もこっちのが好きかも」

「本当ですか? 焼きの方がいい時はいつでも言ってください!」

「これからいる間は毎日作ってくれるの?」


 意気込む私を見て、朝倉さんはクスッと笑った。

 その問いかけに、思わず顔が熱くなる。

 料理を美味しいと褒められたのがいつ振りか分からないほど嬉しくて、少し浮かれすぎていたのかもしれない。


「あの…、ご迷惑じゃなければ」

「迷惑なわけないよ。てか、むしろ俺が無理させてないか心配になるけど。毎朝ご飯を作ってもらえるだけで幸せだと思うから、もっと手抜きしてもいいし、なんならたまにでいいよ。元々朝はコーヒーだけの人間だから」

「私は朝食べないとエネルギーが…」

「新田らしい」


 穏やかな空気の中で、ゆっくりと朝食を共にする。

 食べ終えた後は手早く洗い物を済ませ、私は一足先にスーツのジャケットを羽織った。


「それでは朝倉さん、私は先に家を出ます」

「車通勤だから、乗ってく?」

「あ…、いえ、それは、まだ今は一緒に暮らしてるとバレると会社的にも私達的にも良くないかなと…」


 少し遠慮がちに伝えると、朝倉さんは「そっか、わかった」と柔らかく笑って、私の意見を尊重してくれた。


「じゃあ、また後で」

「はい、また」


 そんな挨拶を交わして、重厚な玄関ドアを閉める。

 カチリ、と機械的に鍵が回る音が響き、オートロックであることを再確認した。手帳型の茶色のスマホケースにカードキーを差し込む。

 昨日までとは違う場所や道で、駅へと向かう。

 この家から会社に向かうという事実が、まだどこか現実味を帯びていなくて、不思議な心地がした。
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