Excessive love.
会社に到着すると、車通勤の朝倉さんの方が一足早く席に着いていた。
家ではあんなに柔らかく降りていた前髪が、今は整えられ、凛々しい表情を引き立てている。清潔感溢れるスーツの着こなし。そこには、数十分前までゆるっとした部屋着姿で笑っていた人はどこにもいない。
私しか知らないギャップなんだと思うと、無意識に胸が高鳴った。
「おはようございます」
挨拶をしながらオフィスに入ると、周りからパラパラと返事がくる。
何となくもう一度朝倉さんのほうに目を向けると、ちょうど彼もこちらを見ていて、ふわりと笑顔を向けられた。距離があるせいか、彼は声を出さずに口パクで『おはよう』と告げる。
不意打ちの秘密めいたやり取りに、心臓が跳ねた。照れくささを誤魔化すように軽く会釈をしてから、私も同じように口パクで『おはようございます』と返した。
だけど、気が抜けていた。その光景を誰にも見られていないというのは、私の甘い見通しだったらしい。
「…なんですか、及川くん」
デスクに座った瞬間、目の前の及川くんとバッチリ目が合った。彼はこれ以上ないほどニヤニヤとした、無性に癪に障る顔をしている。
「いや、面白いこと起きてそーだなーって」
「揶揄うのやめてくれる?」
釘を刺しても、彼の口角は下がらない。
人のことを面白がっているけれど、本来なら彼の方がよっぽど幸せの絶頂にいるはずだ。優花と派手に喧嘩をしたあの夜、彼はその足でオシャレなレストランへ連れて行き、プロポーズを成功させているのだから。
今は絶賛婚約期間中。
だけど、社内ではまだ"秘密の恋人"のまま。
理由を聞けば、噂話に邪魔されずにお互いのことをしっかり見つめ直し、納得した上で一年後、付き合って五周年の記念日に籍を入れると決めたらしい。
私からすれば焦れったくて、さっさと籍を入れろと背中を蹴飛ばしたい気分だけれど、こればかりは見守るしかない。
家ではあんなに柔らかく降りていた前髪が、今は整えられ、凛々しい表情を引き立てている。清潔感溢れるスーツの着こなし。そこには、数十分前までゆるっとした部屋着姿で笑っていた人はどこにもいない。
私しか知らないギャップなんだと思うと、無意識に胸が高鳴った。
「おはようございます」
挨拶をしながらオフィスに入ると、周りからパラパラと返事がくる。
何となくもう一度朝倉さんのほうに目を向けると、ちょうど彼もこちらを見ていて、ふわりと笑顔を向けられた。距離があるせいか、彼は声を出さずに口パクで『おはよう』と告げる。
不意打ちの秘密めいたやり取りに、心臓が跳ねた。照れくささを誤魔化すように軽く会釈をしてから、私も同じように口パクで『おはようございます』と返した。
だけど、気が抜けていた。その光景を誰にも見られていないというのは、私の甘い見通しだったらしい。
「…なんですか、及川くん」
デスクに座った瞬間、目の前の及川くんとバッチリ目が合った。彼はこれ以上ないほどニヤニヤとした、無性に癪に障る顔をしている。
「いや、面白いこと起きてそーだなーって」
「揶揄うのやめてくれる?」
釘を刺しても、彼の口角は下がらない。
人のことを面白がっているけれど、本来なら彼の方がよっぽど幸せの絶頂にいるはずだ。優花と派手に喧嘩をしたあの夜、彼はその足でオシャレなレストランへ連れて行き、プロポーズを成功させているのだから。
今は絶賛婚約期間中。
だけど、社内ではまだ"秘密の恋人"のまま。
理由を聞けば、噂話に邪魔されずにお互いのことをしっかり見つめ直し、納得した上で一年後、付き合って五周年の記念日に籍を入れると決めたらしい。
私からすれば焦れったくて、さっさと籍を入れろと背中を蹴飛ばしたい気分だけれど、こればかりは見守るしかない。