Excessive love.
 着替えてリビングに戻ると、安住さんは手早く夕飯の用意を済ませてくれていた。テーブルの上には二人分しか並んでいない。


「安住さんは食べて行かないんですか?」

「私は家族を待たせているので今日はここで! 朝倉さん、食材の買い足しはしておきましたので、朝倉さんも時々は自炊頑張ってしてくださいね」

「料理は一番苦手なのを知ってるくせに…」


 そう言って少しいじけている朝倉さんは、会社での凛々しい姿からは想像もつかないほど可愛らしい。

 思わず吹き出しそうになっている私を見て、安住さんは豪快に笑い飛ばした。


「もう、しっかりしてくださいな!」


 そう言って、朝倉さんの背中をバシッと軽く叩く。その遠慮のなさが、二人の長い信頼関係を物語っているようだった。

 朝倉さんは苦笑いしつつも、嫌がっている様子はなかった。


「それでは後は若いお二人で…」

「安住さん言い方!」

「必要な時はいつでもお呼びくださいね!」


 安住さんは嵐のように賑やかに、けれど手際よく帰り支度を済ませると、あっという間に家を出て行ってしまった。どうやら普段から一緒に食べる習慣はないらしく、朝倉さんも特に気にする様子はない。

 ふたたび静かになったリビング。朝倉さんの向かいに座ると、「食べようか」と優しく声を掛けられた。


「頂きます」


 二人で声を揃えて手を合わせ、料理に箸を付ける。

 自分で作るのとも、外食とも違う。誰かが自分のために台所に立ってくれた温もりのある料理。こうして誰かの手料理を頂くことがこんなに嬉しくて、心に染みるものだったなんて、すっかり忘れていた気がする。
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