Excessive love.
「まずは彼女を責める前に正当な証拠を持ってこいよ。それからなら話は聞いてやる」


 涼しい顔で、氷のように冷ややかなトーンでそう言い放った朝倉さんに、隆太は屈辱に顔を歪ませた。

 反論の言葉すら見つからない様子で、わざと足音を荒立ててその場から去っていく。

 けれど今の私には、隆太の背中を見送る余裕なんてなかった。
 耳の奥で、自分の心臓の音がうるさいほどに鳴り響いている。

 隆太の気配が完全に消えたのを確認してから、朝倉さんが「ごめんな」と静かに、いつもの優しい声で私に言葉を掛けた。


「え…?」

「ああ言うしかないと思って、勝手な事を言った」


 その一言で、すべてを理解した。

 そこに、深い意味なんてなかった。彼はただ、私を守るために、最も効果的な嘘を選んでくれただけ。

 私を実際に好きになったわけではなく、あの場を収めるために。

 そう思えば、助けてくれた彼には感謝しかないはずなのに、どうしようもなく胸が締め付けられた。

 自分でも気づかないうちに、私はもう、朝倉さんに恋をしていた。

 だからこそ、「ああ言うしかなかった」という言葉に、どうしようもなく傷ついてしまった。

 そこに朝倉さんの本当の気持ちはこもっていない。あったのは、上司としての…、同居人としての、純粋すぎるほどの善意だけだった。

 痛みを喉の奥に押し込んで、私は精一杯の平静を装って頭を下げた。


「……ご面倒をおかけしてしまい、申し訳ございません」


 そんな私に、朝倉さんは「君が謝ることじゃない」と、どこまでも優しい言葉を掛けてくれる。

 その優しさが今は一番苦しくて、私はそれ以上、何も言葉を返すことができなかった。
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