Excessive love.
 旅館の部屋に戻ると、優花もすぐに帰ってきた。二人で広い温泉に浸かり、火照った体に浴衣を羽織る。鏡の前で髪を整え、薄くメイクを直している最中、優花が鏡越しに口元を緩ませながら声をかけてきた。


「そういえば、課長とのデートどうだった?」


 普段なら「そんなんじゃないって」と笑って返せたはずなのに、今の私には無理だった。

 楽しかった記憶を、最後のあの言葉が塗りつぶしていく。隆太に理不尽に責められたことよりも「ああ言うしかなかった」という朝倉さんの釈明に傷ついてしまって、整理がつかない。


「んー…、デートでも無いし…」

「何かあったの?」

「いや、楽しかったわよ。二人でまわれた事に関しては。ただ、隆太にちょっと突っかかられちゃって」

「はあ? あいつまだ何か言って来てるの?」

「早く終わってほしいよね、この話」


 苦笑いしながらそう濁すと、優花は呆れたように溜息を吐いた。

 親友の優花にさえ、朝倉さんへの気持ちは打ち明けられなかった。言葉にした瞬間、それは確かな恋になってしまう。傷つく前に、これはただの勘違いだと自分に言い聞かせ、早めに踏ん切りをつけたかった。


「…ま、私にはもうどうでも良いから。行きましょ。宴会場」

「あー、今日もお酌まわらなきゃダメかな。まわると決まって飲まされるんだけど」

「こういう飲み会の定めよね」


 うちの会社には、まだ古い考えの人間が残っている。新卒の頃、誰も席を立たなかったら上司から激しく叱責されたことがあった。それ以来、なんとなく女性社員がお酌に回るのが暗黙の了解になっている。

 今思えば、あれは立派なパワハラだったのだと分かるけれど、当時の私達には抗う余裕なんてなかった。
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