Excessive love.
 手元のお酒を飲みながら辺りを観察していると、優花が席を立とうとしたその時だった。ふらりとよろけた彼女を、経理課の一つ下の後輩、真澄(ますみ) 太一(たいち)くんが咄嗟に支える。

 お腹に腕を回して抱きとめるような形になり、危ういところを守った真澄くんだったが、私は反射的に及川くんの反応を伺ってしまった。

 及川くんもしっかりとその現場を見ていた。

 口元は気付かれないように笑っているけれど、その目が一瞬で氷のように冷たいものに変わったのを、私は見逃さなかった。


「あー、やばい。大分酔ってるかも」


 なんて、大して酔ってもいないくせに下手な演技をして、この場を抜けたがっている及川くん。そんな彼に、朝倉さんは「先に部屋に戻った方がいいんじゃないか?」と、いつものトーンで優しい提案をした。


「そうします。ちょっと風に当たりたいですし」


 及川くんが立ち上がり、足早に会場を去っていく。周囲は「えー、及川さんもう帰っちゃうんですか」とショックを受けていたけれど、そうなれば今度は、唯一残った朝倉さんに注目が集中しそうな気配だった。


「あー…、俺も部屋に戻ろうかな」

「ええ!? 課長まで戻るんですか!?」

「うん。俺も風に当たりたい気がするし…。新田、行かない?」

「え?」


 まさか私に声が掛かるなんて。

 周りの喧騒が激しいのをいいことに、彼は他のみんなには聞こえないほどの小さな声で、私を誘ってきた。

 朝倉さんのことが、ますます分からなくなる。どうしてこんな風に私を誘うのか。


「少し話したいんだけど、部屋来ない?」

「話…、ですか?」

「うん。さっきの事あってから何か少し変だから」


 朝倉さんも、今の私の状況を変だと感じていたらしい。

 そう真っ直ぐに提案されては拒めるはずもなく、私は小さく首を縦に振った。

 私の反応を見た朝倉さんは、少しだけ微笑むと「先に出るから、後からおいで」と告げ、席を立った。

 一人残された私の頬がひどく熱いのは、きっとアルコールのせい。必死にそう言い訳をした。
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