Excessive love.
 落ち着いた後、朝倉さんと向かい合うように座って「ごめんなさい」と、掠れた声で謝罪の言葉を口にした。


「ずっと辛そうなのに泣いている所も見なかったから、逆に安心した」

「安心…、ですか?」

「泣くのもストレス解消に良いって言うから」


 そう言って少し笑う朝倉さんに、私もぎこちなく笑い返す。確かに、溜め込んでいた感情を吐き出したことで、心は少しだけ軽くなっていた。

 …猛烈に恥ずかしい、という思いはあるけれど。


「もし嫌じゃなければなんだけど、俺と仮の恋人にならない?」

「え?」


 唐突に投げかけられた言葉に、思考が停止した。朝倉さんを見ると、彼はいつになく真剣な表情をしている。

 見返してやりたいとは言ったけれど、その手段として仮初の恋人?
 あまりにも現実的ではなさすぎる。


「会社でそこそこ立場もあって、誰とも付き合わなかった俺が、新田を好きで交際したと言えば多少噂になるだろうし、そう言う噂を聞かせながら新田の幸せそうな姿を見せつけるのが一番効くんじゃないかなと思ってる」

「いや…、いやいや…」


 普段、仕事に関してはどこまでも堅実な人が、あまりにリスクの高い提案をしてきていることに困惑した。

 私個人の復讐のために、これ以上朝倉さんを巻き込めない。
 万が一この嘘が会社にバレたら、朝倉さんの立場はどうなるのか。


「浮気は何があっても許されないっていうの、その通りだと思うから。当時の俺の為にも、少しでも力になりたいなって思う」

「朝倉さん…、いやでも…、傷付けられたからといって、嘘で返してしまうのは…」

「相手も少しでも君の痛みを知るべきだと思うよ。むしろ足りない位だと思う。それに、姫野と上手くいかなくても、少しでも縒りを戻せそうって、彼は思ってそうだから、そんな事は万が一でもないって教えてやろう」


 朝倉さんの言葉には、静かな怒りと、既に決意が宿っているように聞こえた。

 その提案に乗ってしまえば、朝倉さんと恋人として振る舞うことになる。たとえそれが仮初の嘘だとしても、私の心は耐えられるのか。

 この提案に乗っていいのか、踏み切れない。
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