Excessive love.
 そして、姫野さんがターゲットにしているのは同年代だけではない。上層部の人間にも彼女を気に入る人がいるという噂があるし、当然、朝倉さんもその例外ではなかった。

 隆太と別れてようやくこういう泥沼の話から無縁になれたと思っていたのに、結局また振り回されてしまっている自分が嫌になる。

 ふと視線を朝倉さんのデスクへ向けてみたけれど、朝倉さんは今、会議中で不在だった。もう二時間ほど席を外しているので、そろそろ戻ってくる頃ではないかと思う。


「今日外回り行かなかったの?」


 横から不意に声を掛けられ顔を上げると、そこには先程まで姫野さんに捕まっていた及川くんが立っていた。自分のデスクに戻るついでに、私に声を掛けてきたらしい。


「あ、うん。今日は何のアポも取っていなくて…。でも行けばよかったなって後悔してる所」

「噂の的だもんな」

「それもあるけど…」


 そこまで言いかけて、私は言葉を飲み込んだ。姫野さんの動向について話しても、及川くんには理解できないだろうなと思ったから。


「二人の事何も知らないけどさ」

「ん?」

「今回は大丈夫じゃない?」


 及川くんの言葉の意図が分からず、私は彼の顔を見た。

 だけど、彼はふっと含みのある笑みを零しただけで、そのまま自分の席へと戻っていってしまった。

 大丈夫、というのは、朝倉さんとの関係のことを言っているのだろうか。

 一体、どういう意味で言ったのか、及川くんには、私にも見えていない何かが見えているのだろうか。
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