Excessive love.
 翌日出勤すると、案の定、凄まじい勢いで姫野さんに捕まった。


「おはようございます。始業前にお話良いですか?」

「昨日の話ならもう聞かないって決めたの」

「でも、本当に助けてほしくて…」


 助けてほしい、という言葉に、思わず顔を顰めてしまう。どちらかと言えば、この状況で助けてほしいのは私の方だ。

 彼氏を寝取った女性から、なぜ助けを求められなければいけないのか。

 相談を持ちかけてきている彼女は、深刻そうな表情で目に涙を浮かべている。だけど、私は基本的にこの手の女の涙を信じていないので、同情も何も感じなかった。

 ただ、彼女が今後何をするつもりなのか、その動きを知るには良い機会かもしれない。そう思い、人気の無い廊下で五分だけ話を聞くことにした。

 昨夜、私を傷つけたくないと守ってくれた朝倉さんの顔が一瞬浮かんだけれど、これは避けては通れないことだと思った。




☁⋆。





 オフィスから少し離れた人気の無い廊下で、姫野さんと向かい合う。私は腕を組み、彼女の言葉を待った。

 以前はこうして二人きりで話すこともよくあった。彼女は事務の女性たちと上手くいっておらず、誰も彼女に仕事を教えたがる人間がいなかったからだ。

 当時は、公私混同する周りも周りだと思っていたけれど、今ならわかる。彼女の男性関係の奔放さゆえに、誰もが関わりを持ちたくないと遠ざけていたのだ。

 私も、男性関係でいざこざを起こす相手とは面倒なので、仕事以外では関わりたくない。


「助けてほしいと言うのは、りゅうくんの事で…、私今すごく責められてるんです」

「責められてる?」

「りゅうくんとは、まだお付き合いはしていなくて…、そもそも先輩と関係が上手くいっていないからって悩んでいて、それで慰めて欲しいってそれだけの関係だったんです」

「慰めて欲しいってまずそれに応じたのがよく分からないけれど」

「目の前で思い悩んでいる人が居たら助けてあげたいって思って…。でも、その後先輩とりゅうくんが別れてから、別れたのは私のせいだって責められていているんです」


 四年も彼といたから分かるけれど、隆太がそんなことをする人間だとは、到底思えなかった。
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