Excessive love.
「実季?」

「あっ…」


名前呼びの破壊力が凄くて、情けない声を出してしまった。そんな風に優しい声で呼ばれるだなんて思っていなかったから、嬉しいのと照れくさいのと…、と色々と感情が混ざってしまった。

恐らく顔も赤くなってしまっているであろう私の反応に、朝倉さんは少しだけ笑っている。


「そんな可愛い反応も出来るんだな。見てて飽きない。」

「か、可愛いだなんて…、そんな。言われたこと無いです。」

「そっか。じゃあ周りの男は目が付いていなかったんだな。俺には凄く可愛らしい女性に映ってる。」

「揶揄わないでください、朝倉さん!」

「こら、呼び方。もう朝倉さんはやめて。適用したからさっきのルール。」

「はっ、いつの間に!?」


私の知らない間にルールが開始されていて驚いた。まだ心の準備も何も出来ていないと言うのに。


「直樹。呼んでみて。」


そう優しく促され、覚悟を決めるしか無いと深呼吸をする。

上司だから緊張しているのではない。私が一方的に想いを寄せている相手を恋人の様に名前を呼ぶと言うその行為が凄く緊張する。


「…な、…直樹さん。」


恥ずかしくて両手で顔を覆って自分の顔を見られないようにした。その間笑われると思っていたのに朝倉さんからも何の反応も出ない。

少し経過してから手を離して朝倉さんを見ると、何故か顔が赤くなっていて、口元を手の甲で隠していた。

こんな風に顔を真っ赤にしている朝倉さんを見る事なんてあまりない。
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