Excessive love.
「あ、あの…?」


 あまりの沈黙に耐えきれず、おずおずと声をかける。

 すると、朝倉さんはようやく顔を覆っていた手をずらし、私を見つめた。


「思ったよりすごく良くて…。可愛い」

「可愛い!?」


 何度もこんなにストレートに「可愛い」なんて連呼される人生ではなかったから、動悸が止まらない。

 仕事ではあれほど冷静で頼りになる朝倉さんが、恋愛においてはこんなにグイグイ来るなんて。かと思えば、私の一言でこんなにも初心な反応を見せる。

 一緒に住み始めてから見せてくれる、色々な顔。その一つひとつを知るたびに、胸の奥が熱くなって、どんどん彼に惹かれていく。

 裏切られて、傷ついて、もう恋愛なんてこりごりだと思っていたはずなのに。


「じゃあ、今日からお互いに名前で呼び合おう。慣れるまで照れくさいかもしれないけど、名前呼びから始めて、徐々に恋人らしい事なんかして…。

…俺、滅茶苦茶な事言ってるな?」

「それは…はい」

「付き合わせて本当ごめん。何はともあれ、まだ家に居てくれるみたいだし、それは嬉しいけど」


 そうやって、すぐに嬉しいなんて言葉を口にする。

 こんなセリフをさらっと言えるのは、他の女性にも言っているから、とさっきまでの私なら、きっとそうやって自分に予防線を張っていたと思う。

 だけど、今は不思議とそうは思えなかった。

 朝倉さんの今までの誠実な態度や、初心な反応が証明してくれている様な気がしたから。

 もしかしたら本当に、直樹さんが私を本気で好きになってくれる未来があるのかもしれない。そんな淡い期待を、抱いてしまった。
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