Excessive love.
「あ、待って。直樹さん。」

「ん?」


私の呼びかけで先に玄関に向かおうとしていた直樹さんがこちらに振り向くと、お弁当の入った袋を直樹さんに渡した。袋を軽く首を傾げながら受け取ると「何これ?」と問い掛けてくる。


「不要かとは思ったのですが、よければお弁当を…。忙しさでお昼を食べ逃している時もある様ですし、お弁当ならオフィスでも食べられるかなって。」

「本当に?わざわざ作ってくれたの?」

「あ…、朝早起きしてしまって、よければ。」

「嬉しいよ、ありがとう。」


嬉しそうな反応を見せてくれた直樹さんに少し安心して、私も「いえ」と短く返事をした。

勝手な事をしたのに嬉しいとありがとうを伝えてくれる直樹さんに、また私は惹かれてしまう。


「じゃあ、行こうか。」


そう言って手を差し出されて首を傾げた。お弁当は渡したし、もう渡す物はない。


「…あの?何か忘れ物ですか?」

「今日は手を繋いでみようかなって。駐車場までだけど。」

「ええ!?」


しばらくは名前呼びでもいっぱいいっぱいだったのに、直樹さんはまだ先に進むらしい。手なんて、もう久しく異性と繋いでなんかいない。

隆太と交際していた時も、無駄に触れ合ったりなんてとっくになかったし、久し振りで緊張しすぎて、自分の手汗などが気になってくる。
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