Excessive love.
その日の帰り、定時に仕事を終えて帰ろうとしていた。

PCの電源を落として軽くデスク周りを掃除して帰ろうかと席を立ちあがった。そのタイミングで「実季。」と話し掛けられて声の方に向くと、直樹さんだった。


「お疲れ様です。」

「お疲れ様。帰る?」

「はい、今日の業務は終了したので。」

「そっか。金曜日だし、今日はどこかで食べて帰る?」

「えっ、」


こんな風にどこかに誘われるのは初めてで、少し驚いた。

今までに2人でどこかに出かけたりすることは無かったし、会社帰りにご飯を誘われるのも2人きりではなかった。


「行きたいです!」

「分かった。着替えたいし、車も置きたいから一度家に帰ろう。」

「はい。ちなみにどこに食べに行きますか?」

「何か食べたいものある?後、食べれないものも。無かったら俺がいつも行くところにしようかなって思うんだけど。」

「じゃあ、直樹さんの行きつけのお店で。」

「分かった。待ってて。荷物取ってくるから。」


そう言ってデスクの方に戻っていった。

思わず緩みそうな顔を何とか引き締めていると、その一部始終を見ていた及川くんがにやにやとしていた。


「…何。」

「いや、今日は2人でデートかーって。」

「それ以上からかったらげんこつしてもらうから。お宅の彼女さんに。」

「割と古風なやり方で笑えるな。」


及川くんはこちらに近付いてくる直樹さんに目をやると「楽しんで」と言って、またPCモニターの方に視線を戻す。

直樹さんが「行こうか。」と声を掛けてきて頷いてから、及川くんに「お疲れ様」と声を掛けた。
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