Excessive love.
一度家に帰って着替えてから来たのは、家の近くにある寿司屋だった。

いつもは回転ずしにしか来た事が無いけど、直樹さんが連れてきてくれた場所は職人が目の前で握ってくれる本格的な寿司屋だった。


「すきなもの頼んで良いよ。」

「初めてこういうお店来ました。」

「俺もここに誰かと来たのは初めて。たまに1人で来てたんだけど、最近行けてなかったし、普段ご飯作ってもらえてるお礼。」

「私も好きでやってるだけなので…。あ、でもお寿司はいただきます。」

「好きなだけどうぞ。」


最初に何を頼むか悩んでしまう。すきなものをと言われたけれど、こういうお店って順番とかマナーがあるのではないかと思えてしまって、何を頼むにも考え過ぎてしまう。

直樹さんがそんな私の様子に気付いたのか、カウンターの奥に居る職人に「この子におススメで握ってあげて。」と声を掛けてくれる。


「あ、そう言う頼み方もあるんですね?」

「ここの人はむしろこれぐらいの方がやる気を出して握ってくれるから。任せてもらえるって思うと嬉しいんだって。」

「そうなんだ…、すごく悩んでいたので助かりました。」

「すきなものって言われても初めて来る場所で困るよな。」


こういう所。人の事をよく見ていて、いつも助けてくれる所も好きな一部。

家では助けてあげたくなる様な事も多いのに、外ではこんなに頼もしい。こんなに可愛くて格好良い人に出会ったことがない。
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