Excessive love.
「朝倉さん、いつもの。」


そう言って出てきたのは刺身の盛り合わせに、冷酒グラスに入ったお酒が出てきた。まだ全然食べていないのに…?と心配になる。

いつものと言っていたから、このお店に来るたび毎回の事だから心配はないのかと、そちらを見ていると直樹さんがこちらを見て「飲む?」とグラスを持ち上げる。


「いただきます。」

「グラスもう1つ取って。」


お互いにため口で話しているあたり、本当に何年も通い続けているお店なのかもしれない。相手とも仲が良さそうに見えた。

グラスを1つ手に取ると冷酒を注いでくれた。


「ありがとうございます。」

「実季って酒強かったっけ?」

「そんなに飲めるってわけでもないですけど、弱すぎると言う事も無いと思います。」

「じゃあ、良い飲み仲間来た。」


そう言って嬉しそうに笑っている。可愛い。

ちょっとしたことでここまでときめいてしまうのが苦しいけど、普段の姿を見ているからこのギャップに悶えてしまうのは致し方ない気がしてしまう。


「でも、こういうお店初めてなので少し緊張しました。」

「どうして?」

「何かマナーとかあるのかなって。インターネット上でもこれはマナー違反だとかよく見ますから。」

「うーん。そう言う人も居るだろうし、そういうお店もあるだろうけど、ここは堅苦しいマナーを強いてくるような店では無いし、俺の前では気にしなくて良いよ。美味しく食べれるのが一番だから。」

「そう言っていただけて安心しました。」


そう言うけれど直樹さんの所作はすごく綺麗だし、1つ1つが上品だ。

凄く優しい方だから気にしなくて良いと言ってくれるけど、この人に見合う様に恥ずかしくない人間でいたいと思う。
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