Excessive love.
バーでお酒を数杯飲んだ後、そろそろ出ようかと席を立ちあがる。


「すみません、ここでもごちそうになって。」

「全然。むしろ格好付けるタイミングを何個ももらえて嬉しいくらい。」


そう言ってカードでスマートに支払いを済ませてくれ、エレベーターまで出た。恋人になってから少し照れ臭くて、どうしたらいいか分からなくなる。

そわそわとして落ち着かない私に、直樹さんが私の顔を覗き込む。


「どうかした?」

「あ…、いえ。」


そうぎこちなく返事をすると、直樹さんはそっと私の手を取った。直樹さんは手を繋ぐのも自然なのに、私ばかりが照れくささなどで不自然になる。

顔を俯かせているとそのタイミングでエレベーターが来て、2人でゆっくりと乗り込んだ。1階のフロアのボタンを押して、扉が閉まって動き出すとそのタイミングで突然頭の方向を直樹さんの方に向けさせられて、驚いている間にも唇が重なり合う。

何が起きているかは分からないけれど、抵抗をする意味も無いし、抵抗もしたくないからそのまま身を預けた。何度か顔の角度を変えて唇を重ね合わせると、1階に着く少し手前で顔を離して見つめ合う。


「…今日、部屋取ってあるって言ったら引く?」

「え…、何で?」

「今日はこうするつもりだったから?上手くいかなかったら1人で泊まるつもりだった。」

「ええ…!?」


どこまでもやる事が想像付かない人で、驚きで言葉にならない。


「後はフロントで鍵受け取るだけだけど、どうする?帰る?」


ここでホテルから出て行くか、鍵を受け取るか。

今日交際してそんな事になっていいのか少し悩むけど、このまま帰らせられるのも寂しい。


「…帰りたくないです。」

「そう言ってくれるの期待してた。」


そう言って私の肩を優しく抱き寄せて、一緒にフロントの方に向かう。

今夜はまだ終わらないみたい。
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