Excessive love.
フロントで鍵を受け取るとバーの1フロア下にある客室の階層にスイートルームがあって、その部屋を取っていた。

これをいつから予定していたのかは分からないけど、ここ数日で簡単に取れる部屋ではないのでは?と思った。

ネットで見ていた通り部屋はかなり広くて綺麗で、憧れるだけの価値がある部屋だ。


「ここのバーには何度も来ているけど、部屋は初めて泊まった。」

「初めて、ですか?」

「24の時以来、こんな所に一緒に来る相手も居なかったし、そもそも今ほど金銭的に余裕があったわけでもないから、当時の俺には好きな女性をこんな所に連れてくることも出来なかったと思うな。」

「…私は、その時の直樹さんに誘われたら、安いビジネスホテルでも、ラブホテルでも、ワンルームのお部屋だったとしてもどこへでもついて行ってます。」

「嬉しいけど、君の前ではいつでも格好の付く男で居たいな。」


そう言って苦笑いすると、そのままそっと私の身体を抱き寄せる。前から優しく包み込むように抱き締めてくれて、私も背中に腕を回した。

この歳になるまで上司としてしか直樹さんを見てこなかったから、恋愛関係になるなんて想像もしてなかった。

浮気されて最初は同情からだったかもしれないけれど拾ってくれて、その同情が無かったらきっと私も直樹さんを好きになることは無かったから、今では悪くないと思えている。
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