離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

 珀人さんと口論して少し時間をロスしているから、もう他のメンバーは揃っているのかもしれない。

 自然と小走りで入り口に向かい、誰がいるかも確認しないままとりあえず挨拶のため口を開く。

「お疲れ様です――……あれ?」

 部屋には明かりが点いているのに、誰の姿もない。

 どこか別の部屋に移動して会議中とか?

 とりあえず自分のデスクにバッグを置いて、スマホを取り出す。すると、ちょうど一件のメッセージを受信した。

 グループチャットではなく、真木さん個人から私宛てのメッセージだ。

【もう着いてるかな?】
【はい。ちょうど開発部に到着したところです】

 デスクの前に立ったまま返事を打つ。すぐに既読がつき、十秒ほど遅れて追加の吹き出しが現れた。

【俺ももうすぐだから待ってて。ちなみに、他のみんなは結局都合が悪くなって来れなくなっちゃったんだ】

「えっ……?」

 みんな来れない……?

 信じられないメッセージにぽかんと口を開いた直後、オフィスの入り口で足音がして、スマホを片手に持った真木さんが顔を出した。

 胸の中に、微かな違和感が芽を出す。

 それって、いつわかったことだったんだろう。ホテルにいた時は、葵ちゃんが来れそうだと話していたのに……その後で急に都合が悪くなったのだろうか。

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